法政大学キャリアデザイン学部「キャリア体験学習・ベトナム」の三つの柱の一つ≪国際交流・国際支援≫として、ARBAが設立以前からずっと関わり続けているドンナイ省の「タイホア教会」と「タインタム幼稚園」にも行ってきました。
ビエンホア駅にて。サイゴンからは31000ドン(約155円) |
いつもはベンタイン市場バスターミナルを始発とする路線バス(12番)に乗っていくところですが、今年は一味違います。サイゴン駅から南北統一鉄道に乗り、列車での旅です。この南北統一鉄道は南はサイゴン(ホーチミン)、北はハノイまで約1800kmをつなぐベトナム唯一の列車。私は一度ハノイまで行ったことがありますが、特急でも33時間かかりました…。
列車内の様子 |
今回はドンナイ省までなので、サイゴン駅お隣のビエンホア駅で下車。わずか45分間の鉄道の旅でしたが、車内には長距離移動をするベトナム人家族が多く、私たちは車窓からの景色を楽しむだけではなく、車内に広がるそうした人々のありのままの様子も知ることができました。
ビエンホア駅からは専用車で移動 |
【タインタム幼稚園】
ビエンホア駅から専用車に乗り換え、はじめに「タインタム幼稚園/Trường Mẫu giáo Thanh Tâm」へ向かいました。ここは「聖マリア宣教修道会」のシスターたちが運営する幼稚園で、かつてARBAのメンバーだった川崎陽子さんがホール建設のための支援を行い、現在もARBAがエクスポージャーツアーなどの機会に訪問~交流を続けている場所。9月から新年度のベトナム。この日の幼稚園もスタートしたばかりの慌ただしい中でしたが、シスター、先生、園児たちが私たちの訪問を温かく迎え入れてくれました。3歳児で今期が初めての登園となる子たちのなかには、送りに来た家族と離れがたく泣いている子も。こういう場面は、日本と同じだなぁといつも微笑ましく思います。
訪問時はちょうど朝の体操風景が見られました |
ここ本校には3歳児(芽組)、4歳児(つぼみ組)、5歳児(葉っぱ組)のクラスがそれぞれ3クラスずつあり、現在全9クラスで約400名の園児がいます。この日は行けませんでしたが5kmほど離れたところの分校には、2クラス編成で約60名の園児も。教職員(全員女性)は全部で22名、教員は1クラスにつき2名ずつ配置されていますが、園児数があまりに多く、規定の配置人数には届いていないのが現状だそうです。
各クラスも見学させてもらいました |
ドンナイ省はここ約10年間に工業団地が数多く建設され、工場労働者としての職を求め、ベトナム全土から多くの人が移り住んできているエリアです。タインタム幼稚園に通う園児の親たちも大部分が他の地域からやって来た工場労働者で、元々ドンナイ出身という人は少ないそうです。日中わが子を預かってくれる幼稚園の需要が高まるばかりのこの地域で、幼稚園の数はまだ多くなく、シスターたちが運営しているタインタム幼稚園へ強い信頼を寄せ、預けたがる親たちが後を絶たちません。私自身年に何度もこの園を訪問していますが、その度に園児の数が増えています。最近では、シスターたちは入園を断らざるを得ない状況なのだそうです。
午前中のミルクの時間 |
園内の見学~園児たちとの交流のあとには、ここで園長を4年務めているシスターのタオ(Thảo)さんにお話を伺いました。
ベトナムにおいて、教会や修道会などカトリックの団体が運営を許可されている施設は、幼稚園と障がい者施設のみ。しかしその 施設においても、キリストの教えを伝えることは許されず、国や省の定めるカリキュラムに即して運営しなければなりません。クリスマス会が唯一、学校行事としてできるカトリックのイベントなのだそうです。
クリスマス会の様子 |
現在園が抱える問題は、やはり園児の急激な増加。かつて川崎さんの支援したホールも現在は三分割され、教室として使用しなければならないほど。しかし校舎よりも深刻なのは教員の少なさと教育の質。常に大人の手が足りず、ホーチミンのような都市部と比較すると、教育の質が落ちてしまっているとのことでした。また親たちは工場での仕事が忙しく、なかなか園での活動や子どもの教育へ関心が寄せられておらず、単に「園に預けておけばよい」という意識の親が多いのも、タオさんの悩みのようでした。同じ修道会が運営するホーチミン市内の園には「保護者会」が結成され、親主導のチャリティーバザーなどもある一方、ここドンナイの園ではなかなかそうした活動ができないのが現状です。
カメラと大学生に夢中の園児たち |
運動会やお楽しみ会など、親が参加する活動がたくさんある日本の幼稚園や保育園。この日は私たちから、「日本の園ではこんなイベントをして親たちに園に来てもらいます」という話をしました。「私たちの園も次のステップへ行かなければならいのかも」と考え込んでいるタオさんの姿が印象的でした。私自身、タオさんや先生方がどんな悩みを抱え何を課題としているのか、対話を続けることで知ってきたいと強く思った訪問でした。そしてそこでARBAとして何か協力できることがないだろうかと…。
<続きます>
(きむら)
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