Xin chao!
法政大学キャリアデザイン学部のベトナム研修、「キャリア体験学習・ベトナム」が、9月4日~16日までホーチミンを中心に行われました。ARBAがこの研修のコーディネートを受託するようになり、今年で5年目。キャリアデザイン学部の大学生の皆さんにARBAらしいベトナム紹介ができるようにと、毎年試行錯誤をしながら取り組んでいますが、開始当初から変わらない三つの柱があります。それは、
「国際交流・国際支援」
「異文化コミュニケーション・異文化理解」
「日系企業訪問」
です。この三つに即して、今回の研修を振り返ってみたいと思います。
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≪国際交流・国際支援≫
現地で孤児やストリートチルドレンへの支援活動を行っている非営利団体や個人を訪問し、国際支援活動の現場を見聞します。また、ARBAの事業地であるドンナイ省のタイホア教会、タインタム幼稚園の訪問~見学を行いました。ここではまず、レストラン「フーンライ」と、風呂敷プロジェクトについて紹介します。ここ数年のARBAエクスポージャーツアーでも訪問させていただき、お世話になっている二つの場所です。
【レストラン・フーンライ】
ホーチミン市1区の中心部にお店を構えるフーンライ(Huong Lai:ベトナム語で「ジャスミンの香り」の意)は、ベトナム家庭料理レストラン。ベトナムに渡り、家庭料理の美味しさに魅了されたオーナー白井尋さんが、そんな料理を外国人観光客にも紹介したいと2001年から始めました。
素朴だけどとっても美味しいフーンライの料理 |
フーンライにはもう一つ、「トレーニングレストラン」という重要な顔があります。孤児やストリートチルドレン、貧困家庭など、社会的に困難な環境に置かれたベトナムの若者たち15~24歳)をスタッフに登用し、白井さんがサービスや英語を教えることで接客スキルを彼らに身につけさせ、将来的に彼らがホテルやレストランなど、自分の可能性を別の場所で発揮できるように訓練しています。
フーンライのHP:http://huonglai2001saigon.com/
オーナーの白井尋さん(左列の中央) |
この研修では白井さんと、奥様のかおりさんを囲んで、フーンライに込めた想い、若者たちへの願いなどをたっぷり伺いました。白井さんのお話をこれまで何度も伺って私がいつも思うのは、白井さんがここで若者たちに教えてるのは、スキルというよりも「自分を好きになること」ではないか、ということです。スタッフは、お客さんに温かく丁寧な接客をして喜ばれ、お客さんからのいい反応をもらう。それが、自分は誰かに喜んでもらうことができるんだという自信になり、自分自身を好きになる。自分の可能性に気づき、もっと色んなことにチャレンジしたくなる…。フーンライを卒業して行く若者たちは、小さな成功体験をここでたくさん積み、自尊心を持って別の場所に移って行くのだそうです。
自分を好きになることの大切さは、キャリアデザイン学部の皆さんにも大きく響いたようでした。
【風呂敷プロジェクト】
2007年よりホーチミンで始まった自立支援プロジェクト、「風呂敷プロジェクト」。創設者の竹中麻衣子さんは、10年以上にわたってベトナムへ行き、ストリートチルドレンやHIV感染患者への支援活動を続けてきた方です。そんな竹中さんが現在進行しているのが、この風呂敷プロジェクトです。
プロジェクトの作品たち |
プロジェクトのキーワードは、「フェアトレード」と「エコ」。日本から、ベトナムから、要らなくなった布のハギレを集め、作業スタッフはそれらをパッチワークのように縫い合わせて一枚の風呂敷を製作して販売します。売れた分のお金は、半分をプロジェクト維持費としてキープし、半分を作業スタッフに渡すそうです。作業スタッフの方たちは、病気や貧困などそれぞれの理由により、なかなか固定した仕事に就くことができません。そんな彼らに、プロジェクトでは在宅で風呂敷製作をしてもらい、月に一度のミーティングで顔を合わせ、互いに検品作業~タグ付け~納品をして、次の月の製作に向けて打ち合わせをしています。風呂敷という、ベトナムにはないものを生産しているのは、竹中さんの願いの一つである「エコ」と、日本文化のよいところを紹介したいという想いもあるのだそうです。
竹中さんの活動報告ブログ: http://lifeinhcm.blogspot.com/
プロジェクトマネージャーの栗須さん(右) |
現在は、竹中さんの想いに賛同しプロジェクトに協力するようになった、ホーチミン在住の栗須沙里さんが、実際にプロジェクトの運営にあたっています。本業でも服飾デザイナーをしている栗須さん。自分にできることを模索しながら、毎月作業スタッフの皆さんと共によりよい製品を作ろうと奮闘されている様子を語ってくれました。
スタッフ・ラムさん(中央)が作成した風呂敷 |
この日のお話でわかったのは、現在プロジェクトでは、 スタッフたちの生産技術がどんどん上がっているのに対し、製品がなかなか売れないという困難に直面していることでした。しかし、「どうしたら売れるか」だけを考えてしまうと、「売れる製品を作らなければ」という発想になり、元々竹中さんが始めたときの想い~困難な環境に置かれたベトナムの人々に、自分の可能性・価値を見つけてほしい~という想いから離れていってしまうような気もします。この訪問を通し、支援の現場に直面することで、キャリアデザイン学部の皆さんとも「支援とは?」と考える機会ができました。
私は、白井さんと栗須さんに共通するのは、お二人とも、お店やプロジェクトを大きくしたり、ずっと続けることを目標としているのではなく、「いま、ここで自分にできることは何か」を常に考え、大切にしているということではないかと感じました。もしかしたらずっと続けることはできないかもしれないけれど、大好きになったベトナムという国の人々と一緒に何かを生み出したい、それが少しでも困難な環境に置かれた人にとってプラスになればよいと、そう願っているお二人の姿は、純粋に素敵だと思った訪問でした。
<続きます>
(きむら)
私たちは組織や運動を立ち上げると、どうしても「より強く、より広範に」を旗印にし、運動や組織を大きくすることをめざしがちになります。その運動を始めた時の願いはけっしてそうではなかったはずなのに・・・・おおきくすること、強くすること、そしてたくさんの資金を得ることは、支援活動に不可欠なものなのでしょうか?もっとプリミティヴで、純粋な願いからはじまったのではないでしょうか?その問いなおしはわたしたちARBAの活動の理念にもなっています。入会を勧誘しないことは、NPO活動においてはとても難しいことです。でも、白井さんや栗須さんの話を聞いていると、そういった私たちの理念は決して間違っていなかったんだなと思えてくる機会になりました。(み)
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