2014年9月23日火曜日

法大ベトナム研修報告③~「タイホア教会」


タインタム幼稚園を後にし、向かったのはタイホア教会(Giáo xứ Thái Hoà)。現在ここの神父を務めるチー(Trí)神父と面会しました。

タイホア教会の正門

現在、ベトナムにおいてカトリックを信仰する人の数は全人口の約7%と言われていますが、ここドンナイ省はベトナム全土で最も信者が多い地域。1954 年、ジュネーブ協定の締結によってベトナムが北と南の二カ国に分断された際、北の急激な社会主義化を恐れたカトリック信者たちが大勢南に移住してきまし た。その際、そうした信者たちを積極的に受け入れたのがこのドンナイ省で、信者たちはコミュニティを作り(あるいはコミュニティごと北から南に移住し て)、自分たちの教会を建設してきました。実際にドンナイ省には教会が密集していて、国道1号線沿いには数km間隔(なかには数百m間隔?)で教会が建ち並んでい ます。タイホア教会もその時代に建てられた教会の一つで、現在まで地域住民の信仰の拠り所として存在しています。

毎日ミサの行われる礼拝堂

各教会にはそれぞれ「教区」と呼ばれる管轄区域があります。タイホア教会の教区には約1万の住民が住んでいるそうですが、うち約4000人がカトリック信者で、 タイホア教会に通ってきています。タイホア教会では毎日ミサがありますが、平日は朝と夜に2回、土日は朝2回夜2回の計4回。そのミサを取り仕切り、 4000人の信者たちにイエスキリストの教えを説き伝えているのがチー神父です。

教会の紹介をしてくれるチー神父(左)

チー神父がこの教会に赴任して約3年。以前は川崎陽子さんとお知り合いだったフーン神父がいて、私たちARBAの訪問やホームステイを受け入れてくれていました。3年前にフーン神父が4kmほど先のバックホア教会に異動になった際、フーン神父は後任のチー神父にARBAのことを紹介してくれ、引き続き私たちが訪問できるように繋いでくれました。それ以来チー神父はこうしていつも私たちと一緒にテーブルを囲み、教会やこの地域の紹介をしてくれます。チー神父は口癖のように私たちに話します。「ホーチミンだけがベトナムではありません。こうした他の地域のことも知って帰ってくださいね」。

現在はバックホア教会に赴任しているフーン神父

前回の幼稚園の記事にも書いたように、このドンナイ省は近年急激に工業化が進み、工場がたくさん建設されているエリア。タイホア教会の教区のなかには別の地域から職を求めてやって来た住民も多いですが、彼らはカトリック信者とは限りません。チー神父の話によると、最近では単身でやって来る若者の間で深刻な問題として、人工妊娠中絶の問題があるそうです。ベトナムでは性教育が学校では行われていないため、若者たちは正しい知識を持たないまま望まぬ妊娠をし、経済的な困難により中絶するというケースが多いようです。チー神父は、信者に限らず教区内に住むそうした若者に対して性教育を行うとともに、堕胎された命を病院から引き取り、タイホア教会内の墓地に埋葬する活動もしています。

教会内の墓地。「200の命が安らかに眠る場所」というプレートも。

この日、私たちはチー神父のお話を聞き、教会内を散策した後で、夕飯をいただいて夜のミサに参加させてもらうことにしました。ミサの1時間前から、地域には礼拝堂の鐘が鳴り響きます。夕方頃から徐々に教会内の広場には人が集まり始めていましたが、特にに学校から下校した子ども達が、教会内の遊具を使って遊ぶ姿が目立っていました。教会は地域住民たちにとって信仰の拠り所であると同時に、集いの場・憩いの場でもあるようです。彼らの生活は、いつも教会とともにあるのだと感じます。

いつも美味しいご飯を作ってくれるおばちゃん。夕飯後は彼女もミサへ

私は何度もここのミサを体験させてもらっていますが、今回もまた、何とも言えない非常に厳かな、不思議な空間であると感じました。イエスの教えも、聖書の内容も、私自身まだまだよくわからないことだらけですが、神父の言葉ひとつひとつに熱心に耳を傾け、こうしたミサの時間と空間を共有する信者さんたちの姿を見ていると、タイホア教会やチー神父が彼らにとってどれだけ大切な存在であるかを確認することができます。

教会の敷地内を案内してくれるチー神父
 
そしてそんな教会が、ARBAや法政大学といった外国人グループの私たちを受け入れてくれるということ。ミサの後、参列していた子ども達は勢いよく私たちのほうへとやってきて、ノートにサインをしてほしいと懇願していました。年に数回、こうして時々やってくる私たちARBAは、ここの人たちにとって一体どんな存在になっているのだろうと、考えずにはいられませんでした。通い続けることを大切にしてきたこれまでから、教会の人々のことをもっともっとよく知り、関係を発展させたいという気持ちが、私の中で芽生え始めています。

(きむら)

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