前回までの記事で、「国際交流・国際支援」、また日本語教育を通した「異文化コミュニケーション・異文化理解」に関する活動について、紹介と報告をさせていただきました。
ですがこの研修で最も大切にしてきたことは、実は研修全体を通した日々の生活のことでした。ここに、私たちARBAだからこそ提供できるベトナム滞在を体現していました。
宿泊所の一つ、サイゴン駅に近いアパートメント |
研修の12日間は「旅行ではなく暮らしてみる」「ひとりであることを楽しむ」をキーワードとし、意識して過ごしてほしいことを、今年4月の段階から参加学生の皆さんに伝えてきました。そのための方法として、宿泊所はあえてホーチミン市の中心部を避け、外国人観光客が滅多に行かないローカルなエリアのサービスアパートメントを2カ所選び、分宿しました。またその宿泊所から訪問先への移動には、積極的に路線バスを使ってもらうようにしました。そうすることで、素のベトナム・ホーチミンを味わい、観光旅行では得られない生活体験をしてほしかったのです。
皆で積極的に活用した路線バス |
ありのままのベトナム・ホーチミンを体験するためには、誰かの視点を借りるのではなく、周りを目を気にするのでもなく、自分自身の感性を十分に使い、街に飛びこんでいく必要があります。そのため、研修中は一人ひとりが個室に滞在し、 食事もいつも全員でとるわけではなく、ひとりで行動できる自由な時間を多く設けていました。初めての異国の地をたったひとりで歩き行動するのはとても勇気のいることですが、だからこそ得られる、知ることのできる事柄がたくさんあります。ひとりでいる時間を少しでも充実して過ごせるよう、今年4月から7月まで行った日本での事前授業では、ベトナム語学習にも多くの時間を使いました。ベトナム語を上手に話すことが目的ではなく、ホーチミンの街に飛びこむための勇気のアイテムとして、参加学生の皆さんに持っていてほしかったのです。12日間は毎晩ミーティングを行っていましたので、各自がひとりの時間で得たことを他のメンバーへ伝え、それを元に意見交換することもできました。
大衆食堂で食事を取ることもありました |
最終日、参加学生の皆さんに「12日間で出会った人の中で、もう一度会いたい人を一人だけ選ぶとしたら誰?」という質問を投げかけてみました。てっきりそれぞれの訪問先で印象的だった人の名前が出てくるかと思っていたのですが、彼らからは「バインミー屋のおばちゃん」「毎日行ったコンビニの店員」「アパートのフロントのお兄さん」「商店でお母さんを手伝っていた女の子」など、訪問先以外の生活の場面で出会った人のことが多く出てきました。それぞれが私たちARBAスタッフの知らないところで、それぞれの暮らしを楽しんでいた証拠じゃないかと思えました。最後に皆で、そういった大切な人たちに向けてベトナム語でメッセージを作成して、それを伝えてから空港に向かうことにしようと決めました。後で聞いたら、全員がきちんとお別れを言えたようでした。
きっと観光の視点ではできなかったベトナム滞在が、この研修では実現できたのじゃないかと思います。もちろん研修の内容としては、まだまだ検討すべきこと、見直さなければいけないこと、より工夫できることも多々ありますが、ARBAらしさをめざしたからこそ実現できたこともあったと感じられます。
まだまだここに書ききれない出来事が12日間ではたくさん起こりましたが、最後に無事終了のご報告と感謝の気もちをお伝えできればと思います。
この研修に携わってくださった皆様、応援してくださった皆様へ。本当に、ありがとうございました。
Xin cảm ơn!!
(きむら)