2015年3月9日月曜日

プノンペン スティンブミアンチェーVDTOでの「食育」特別授業報告その2

今回の食育実践にとどまらず、同地で支援活動を行う上で最も大切にしてきたこと。。。それは現地の歴史的文化的風習を前提とし、それを否定することなく、日本の持つ教育的経験やアイデアを加味することで、あたらしい教育的価値を創造していくことにあった。

カンボジアの小学校の国定教科書にも、「食」に関する記載がある。それを前提としたコースウエアの作成に留意した。

カンボジアの小学校教科書の食育について
 
何しろ先生たちも子どもたちも初めてのこと。お互いに考えながら、一緒に自分たちの食について考えてみよう、という空気だけは醸成できたのではないだろうか。

とはっても、これはVDTOに限らずカンボジアの学校文化・教師文化に由来することなのだが、食事に対する「規則」や」法則」に力点が置かれてしまい、先ず自分が普段食べているものと自分の成長との関係を客観的に理解するまでに至らなかったことが最大の反省点といえる。
先生による特別授業

また、成長に不可欠な3大栄養素と、カンボジアの伝統的な食材や料理との分類が事前準備の不十分さから不明確になってしまったことなどもこんごの課題として挙げられる。

これらの問題点はさておき、子どもたちは初めての授業に大はしゃぎで、普段とは違うディスカッション型の授業を大いに楽しんでくれていた。なによりもグループごとについてくれたツアー参加者の存在が、彼らの励みになっていたことも間違いない。

他方でこれらの「食育」意識が今後どのように日常として定着していくのか、については上述以外にも様々な問題がある。
今回の特別授業の一環として用意したお弁当は、現地の業者と相談しバランスの取れた副食や主食にしたが、1個当たりのコストが4ドル以上となり、この地域の子どもたちが日常的に食べることができない価格となってしまった。子どもたちと家庭に負担のない価格で提供可能な食の創造は、今後の最大の課題である。


当日のお弁当

 またカンボジアの既存の学校文化との接合をどのように工夫していくのか、については、今後さらに検証していく必要があるだろう。
 
 今回参加した子どもたちには、身長体重を定期的に計測する「身体検査」を提案し、それをデータ化して分析することとしている。身体検査のデータの問い扱いについては慎重にするよう先生たちにも要請しているが、そもそも身体検査が本質的にもつ「標準性」への従属が過度に強調されないようにする配慮も必要であろう。

 食べることは決してとまることのない毎日の所作である。だからこそ、今回の特別授業も継続していくことに大きな意味がある。一過性のイベントに終わらないよう、 食べることと自分の成長との関係を子どもたちそして親・教師たちがどのように主体化していくのか、これからの継続的活動にかかっている。

当日協力していたいだいたツアー参加者からは、食育と学校行事を組み合わせたイベントをやってはどうか、という提案もいただいた。また
田植えや農村見学などと合わせた、食べることへの意識を高める行事や、子ども達自身が実際に食材を調達し、料理を手掛けてみるような調理遠足などの実施も検討していきたい。
グループディスカッションの結果プレゼン
(事務局)

プノンペン スティンブミアンチェーVDTOでの「食育」特別授業報告その1


10年来VDTOを訪問を続けてきて常に感じてきたこと。それは子どもたち自身の「食」に関する無防備さ、であった。

昨年8月以来半年余りの現地調査や状況把握を踏まえて、今回のツアーでは、初の試みとして参加者の協力のもとVDTOでの「食育」に関する特別授業を試験的に実施することとした。

 
1、なぜ食育?

VDTOに通っていて気がついた事がある。それは、子ども達が朝の登校時間、休み時間に何かしら、食していることだ。食パンとコンデンスミルク、マンゴー、スナック、炭酸飲料、、、ポケットから数百リエルを出し、校内で買い、食す。食べる事が休み時間の過ごし方と言っても良いと感じる程である。みんなでわいわい食べる、それは微笑ましい光景だが、その一方で体の小ささが目立つ。だからいけない、良くない、とは一概に言う事はできないが、「食べるって大事だよ」ってことを子ども自身で気がつける、そんな企画をしたいと思ったのです。カンボジアの食生活に欠かせない御飯‘米’を中心にご飯の大事さが伝わる企画にしたいと考えています。(企画書より)
 

2、目標として

子どもが自分の食生活に興味を持つ

自分自身の身体、成長に興味を持つ

食事を食べる意味、食べ物の働きがわかる

 
日本的に解釈すれば、食育とは「食」に関する知識と「 食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる自分自身の「食」への関心を高め、それを「習慣」にすることをめざすもの。ということになる。

 しかし今回最も大切にしたこと、それは教職員も含めた学校全体として「食」への関心を高め、食べることと子どもたち自らが自分の成長との関係を主体的に理解することにおいた。

1/ワークショップ•クイズ内容
<クイズ>

出題形式:

 朝ご飯‘今日朝ご飯食べてきた人?’
①朝ご飯は何の為に食べるのでしょうか?

 A 勉強に集中するため

 B 生活リズムを整えるため

 C一日に必要な栄養を3回にわけて取るため

a 全部正解です。朝にはエネルギーが不足しているため、元気に勉強するためにも朝ごはんは大事。

 
②朝食にご飯を食べるとなにが良い?

  A眠くなる

 B体温をさげる

 Cエネルギーを作る

a C しっかり食べることで、お腹が減って力が出ない、ということにはならない。よく集中できる。


③お米に含まれる炭水化物を栄養にして働くのはどこでしょう?

  A

 B

 C心臓

a A お米、ご飯だけじゃなくて、パンにも炭水化物は含まれていて、食べることで、脳に栄養がいく。


④お米を食べるのに気をつけることは?
 A早く飲み込む

 Bたくさんを一度に口にいれる

 Cよくかんで食べる

a C 口の中でよく噛むことで、栄養になりやすい。

ご飯が体の中でする働きで正しいのはどれ?

 Aエネルギーの元になる

 B血や肉になる

 C身体の調子を整える

Aご飯はエネルギーのもとになります。

 ⑥とりすぎると身体に悪い「SOS」ってなに?

 Aお肉

 B塩•油•砂糖

 Cすいか

a B solt oil sugar

 なぜ毎日いろんな食べ物を食べる必要があるのでしょう?

 みんなが食べている食べ物には、それぞれ3つの働きがあります。
   a身体を作る b身体を動かす c元気でいられる

 みんなが普段食べているのは、どの働きをするでしょう?

A豚肉•鶏肉•卵•魚•豆乳•牛乳

Bマンゴー•空芯菜•果物•野菜

Cごはん•パン•おかゆ•麺•砂糖
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以上のコースウエアをもとに、今回はワークショップというより先生からの食に関する授業を中心に、子どもたちに自分自身の日常的な食事を振り返り、自分の成長との関連付けを意識化させることとした。次回は実施報告を。